complex
mailto「現場」研究会について今月の「現場」研究会
archiveart scenepress reviewart reviewessaygenbaken reporttop
2008年9月

今月のゲストはウエマツ画材店代表の上田邦介さん。
土佐光起の史料を読み解き日本画画材の研究を進めるほか、
日本画だけでなく油彩や水彩にも使えるオリジナルのメディウム「アートグルー」の開発にも携わっている方です。

話題の中心はもちろん日本画画材について。
じっさいに岩絵具や膠を扱ったことがないと
なかなか作品の組成のイメージが湧かないものですが、
今回の現場研には画家の山本直彰さん、間島秀徳さんにもお越し頂き、
実践の場からの貴重なご意見を聞くことができました。

上田さんいわく、伝統的な日本画で使われているような膠は
現在は生産されていないのだそうです。
当時、日本画で使用される膠の主な原材料は魚。
接着力がとても強い上に透明度が高いので、上塗りにだけ用いられるものだったようです。
ふだん、私たちが作品を鑑賞しているときには気づかないことですが、
こうした「見えない構造」が絵画の歴史を支えているんですね☆

そのほか、明治期に作られたという良質な三千本膠や、
新開発のベタつかないメディウムを塗布した実験作など、
現物を見せてもらいながら
過去と現代の絵画材料をめぐってレクチャーしていただきました。

上田さん開発のメディウムは膠と油を配合したエマルジョン。
ヨーロッパにはテンペラや油などを併用した混合技法というものがあるけれど
日本にもむかしから同様の考えがあった、というのが上田さんの展開する説です。
複合的な性格を持つ技法・材料こそ、現代絵画が求めるものなのでしょう。
ディスカッションでは、
かつての複合的な技法が近代を経て均質化した...という見解まで飛び出しました。

技法・材料史におけるモダニズムの再検証、なんていうのも面白いかもしれませんね。
専門的でいて多方向への拡がりを持った
とても興味深い議題でした\(☆_☆)/(M・N)

inserted by FC2 system