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2008年11月

11月の研究会では、黄金町バザールディレクターの山野真悟さんをお迎えし、黄金町の「現場」でお話を伺いました。

山野さんは福岡で開催された「ミュージアム・シティ」、「中国前衛美術科展 [非常口]展」などのディレクターを務めて来られた方です。また近年では、前回の「横浜トリエンナーレ 2005」のキュレーターを担当されました。
今回の現場研では、黄金町バザールの企画開催に至るまでのご自身の活動を振り返っていただくかたちでお話をして頂きました。

山野さんは、今回の黄金町でのアートプロジェクトの仕事の依頼が来た時に、「僕しかやれる人間はいない」と思ったそうです。黄金町バザールとは、特殊飲食店街の一層摘発後の空き店舗をアーティストが行政から借りて行うアートイベントです。アーティスト(空き店舗使用者)の選考は、必ずしも美術作品ではなくても良く、カフェや衣料系の店舗も選考対象に設けたようです。基本としては作品の場合は「わかりやすいもの」とし、美術作品とカフェや店舗を同列に捉えるという特徴を持たせています。このことは黄金町バザールの開催目的を” 黄金町エリアの将来像の提案”としていることから、美術と生活の段差をなるべく感じさせないようにしたためだそうです。
その目的のために、なるべく風景は変えないこと、店が閉まり人通りの少なくなった通りにあえてインフォメーションを設置し、人の流れを戻す、などといった町づくりも提案・実行されています。
また、バザール期間中数々開催されているワークショップには、コミュニティが分散してしまった場所で催しを行い、子どもたちが交流する場を生む事で次世代のネットワークを作る試み、という深い意味が込められているそうです。

山野さんのお話から、アートディレクターの活動というものは体力・財力共に大変なお仕事だという事を強く感じました。経済情勢や行政の意向などに左右されてしまうことはよくあることらしく、ひとつのプロジェクトを遂行するには強靭なメンタリティが必要なのだと感じました。山野さんは行政と民間との間にたち、「美術」だからこそできる可能性を提示し、問いかけ続けていらっしゃいます。アートプロジェクトを行う姿勢として「僕は借金をしてでもやるタイプかもしれない・・・」という言葉が印象的でした。

今月も熱気のある研究会となりました。山野さんをはじめ、黄金町バザールスタッフの方には会場も提供していただき、参加メンバー一同、感謝しております。(M.H)

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