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2009年4月

これまでの現場研ではアート・アクティヴィズムを中心にテキストを紐解きディスカッションを重ねてきましたが、今回はメンバーである提髪明男氏に、アクティヴィズムの一例として60年代の学生運動について御自身の回想をもとにお話をしていただきました。

提髪氏がはじめにおっしゃっていたのは、当事者として当時を振り返ったときに「新左翼」と呼ばれることに違和感があるということです。学生運動というと思想的な面がとかく語られますが、提髪氏は、当時、学生運動に関わるようになった根源には、もっと土着的な背景があったことを体験から重視されています。

当時のメディアは新聞、月刊誌、週刊誌、ラジオなどと限られていましたが、そこでは平和記事が現在よりも大きく取り上げられており、戦争の負の部分を目の当たりにしていた人々は、政治的な意識は現在に比べて非常に高く、また、様々な職場で労働運動が行なわれる際には、人数を増やし勢力を誇示するために、学生のセクトもそれらの労働運動に参加するなどなど、政治や社会状況などは、個々人の生活の中で現在よりもはるかに身近な存在だったことがあげられました。

提髪氏はそういった背景から自然と学生運動に関心を持つようになったので、当時、自分が「新左翼」であるという自覚は無かったそうです。

提髪氏は、自身の学生運動から、単に思想ありきで始まった運動というのではなく、社会全体の何かが変わろうとしていた時代において、実際の生活に根差した意識を基に、それぞれのセクトが真剣に革命を考えていた運動であったと振り返ります。60年代における「新左翼」は、現在私たちが考える「新左翼」よりも心情的なものであったようです。

だからこそ提髪氏は「新左翼」だけでなく、現在語られているところのアクティヴィズムについても、どうしても違和感が拭いきれないとのことでした。

今回の会合は、若い世代のメンバーにとってはメディアでしか知らない当時の状況を理解するために良い機会でした。また、会合自体、笑いや意見が飛び交いながら和やかな雰囲気で進行していきました。

お話をいただきました提髪氏に感謝を申し上げます。(M.I)

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