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2009年5月

5月の現場研は、杉田敦氏(美術批評、art &river bankディレクタ、女子美術大学教授)をゲストにお招きしました。杉田氏の活動を通して、ご自身のアクティヴィズムについての考えを中心にお話頂きました。

杉田氏は大学では理学部の物理学科で科学の理論を学び、科学自体ではなく科学テクノロジーなどが社会でどのように機能するのか、そこにはどんな欲望や政治があるのかということに興味を持ったと言います。こうした問題意識は、様々な分野に置き換えることもでき、アートという制約の少ない世界においても読みかえることができるのではないかという考えに辿り着いたようです。

そのような思いから、自身の執筆活動についても客観的な観測者として物事を捉えるのではなく、書くこと自体をパフォーマティヴなものとして捉えているという考えを述べた他、オルタナティヴ・スペース(art &river bank)の運営や、様々なプロジェクトの実践を通して、解釈する側ではなく、される側になろうと試み続けてきたと自身のスタンスについて話されました。そのあり方は、今現在働いている場である大学でも同様で、大学院GP(Good Practice)という教育改革プログラムを提案し、実行している途上でもあり、教育改革もその実践の一環として取り組んでいるとのことです。

杉田氏の活動についての話の中で挙がった「Oral Critic Archive」は、大学院GPと関連したプロジェクトの一つで、国内外の批評家たちにインタヴューしてヴィデオ撮影で記録しアーカイヴ化するというものです。文字化する時にそぎ落とされてしまう表現までもすくい取ろうとする試みで、単なる研究資料としてではなく、集めていくプロセス自体にも意味を見だし、実践的活動として機能させようとする試みだと言います。こうした活動は非常に面白いものですが、既存の大学教育のイメージに捕らわれる学生にとっては理解し難い取り組みにも見えるようで、参加を促すことが難しい場面もあるようです。

杉田氏にとってのアクティヴィティとは、字義通りの政治的な活動としてのアクティヴィティではなく、今までスタティックだと考えられてきた領域を少し振動させて、そこにいる人たちを実践の場に扇動していく活動そのものであり、スタティックなものを実践的なものだと見直す、配置し直す、再構成し直す、その活動にこそ面白さを感じているとのことでした。

今回は、杉田氏の活動の一つひとつには、どんな考えがあって総体的にリンクしているのか、ということが伝わり非常に興味を持たされる会合でした。皆さんも積極的に質問や意見を述べて、ホッピーを飲みながら楽しく議論を交わすことができました。

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