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2011年6月

「批評の危機/危機の批評」討論会――足立元氏(美術史家)、暮沢剛巳氏(美術評論家)、中村英樹氏(美術評論家)、西村智弘氏(美術評論家)、山盛英司氏(朝日新聞東京本社文化グループ担当エデュター)、森啓輔氏(武蔵野美術大学芸術文化学科助手、討論会司会)を迎えて

 

6月の「現場」研究会は、昨今相次ぐ美術批評家の訃報を受け、改めて「美術批評」をテーマに取り上げることになりました。また、「美術批評」に関するシンポジウム開催の可能性を探ることも念頭に置き、多くの発言者を招いての研究会となりました。

 まず、「美術批評家の終焉」というキーワードを中心に議論が進みました。針生一郎や中原佑介が美術批評家として活動を始めた1950年代後半に始まる美術批評の歴史的変遷の中、発言者それぞれが自身の立ち位置を再確認している様子が印象的でした。
 美術批評の歴史に対する関心と共に、昨今の美術批評の置かれる現状についても議論は及びました。Twitterやブログなどによる「瞬間の批評」が増加し、素人とプロの境界が表面上曖昧になるなど今日の美術批評を取り巻く現状が指摘されました。また、昨年の瀬戸内国際芸術祭を筆頭に、各地でアート・イベントが開催されるなど現代美術が盛り上がりを見せる一方で、それらに対する批評の盛り上がりに欠けていると意見が出ました。
 また、美術館員や新聞記者が美術批評家の仕事の一端を担っている点も挙げられました。彼らの書くテキストと美術批評家のものとの違いは何なのか?という問いに対して、昨今の展覧会カタログや新聞記事のテキストのインタビュー志向を指摘する意見も出されました。
 他にも、作家にとって批評がどのような意味を持つのか?など様々な議題が出されました。3時間半に及んだにもかかわらず、ゲスト、参加者共に議論の尽きない研究会になりました。「美術批評」シンポジウムの開催に向けて手ごたえがあったように思います。


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