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2012年7月

「銭湯ペンキ絵再考」 ――田中みずき氏(銭湯ペンキ絵師見習い・カロンズネット書き手)を迎えて

 田中みずき氏は、現代アートのレヴューサイト「カロンズネット」のライターである一方で、銭湯ペンキ絵の絵師として活動しています。
 「銭湯」といえば、ヤマザキマリの漫画『テルマエ・ロマエ』(1~4巻、エンターブレイン)が国内外で評価され、2012年春には実写版の映画が上映されるほど反響を呼んでいます。しかし、日本の風呂文化にとって重要な「銭湯絵」を描ける絵師は、現在、全国に2人しかいません。田中氏は、そのうちの一人である中島盛夫氏に師事し、銭湯ペンキ絵見習いとして、制作現場の記録(「銭湯ペンキ絵師見習い日記」)や銭湯ペンキ絵の歴史調査をされています。
 田中氏には、制作風景の写真をふまえながら、ペンキ絵制作の仕方を説明していただきました。それから、現代の銭湯絵のモチーフおよび最近流行のモチーフであるご当地キャラが登場する銭湯絵の例を紹介していただきました。また、大正昭和に描かれた銭湯絵のモチーフがどのようなものであったのか、資料に基づいた研究を発表されました。
 田中氏は、過去と現在に共通する銭湯絵のモチーフとして、「富士山」が描かれていることに着目し、脈々と続いている富士山疑似拝観の歴史があることを指摘されました。なかでも、明治24年に設置された錦町のパノラマ館(浅井忠筆)は、「富士川より富士山を望む」という興味深いものでした。その後、ディスカッションでは「富士山」にまつわる様々な話題が飛び交い、日本人の「富士山」信仰を再認識するものとなりました。今回の研究会は、田中氏の真摯な姿勢に一同こころを打たれた様子で、終始なごやかな雰囲気でした。

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